3年前に公開され大ヒットした映画『キングダム』の続編『キングダム2 遥かなる大地へ』が、7月15日に公開された。紀元前の中国・春秋戦国時代を物語の舞台にした同名の漫画が原作で、主人公・信を演じる山崎賢人のほか、のちの秦の始皇帝を演じる吉沢亮など、人気俳優が多数出演している。群雄割拠の戦国時代で秦が中華統一を果たせた理由について、歴史作家の島崎晋氏が考察する。
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人気漫画『キングダム』の実写映画化の第1弾(2019年公開)は日本国内だけで興行収入57.3億円、観客動員数378万人というヒットを記録した。
舞台は紀元前3世紀後半、戦国時代も終盤に差し掛かった中国で、主人公の信(山崎賢人)は奴隷の出身。ひょんなことから、のちに秦の始皇帝となる秦王・政(吉沢亮)を助け、「天下の大将軍」になることを夢見て邁進する。
前作では信と政の出会いから、山界の王・楊端和(長澤まさみ)の加勢を得て、王宮奪還に成功するまでが描かれた。今回の『キングダム2 遥かなる大地へ』では、のちに軍師となる河了貂(橋本環奈)、政側近の昌文君(高嶋政宏)、武将の王騎(大沢たかお)、騰(要潤)、壁(満島真之介)らが前作から続投。さらに最強の暗殺者である羌塊(清野菜名)、本能型武将のヒョウ公(豊川悦司)、相国(丞相)の呂不韋(佐藤浩市)、魏の武将の呉慶(小澤征悦)などが加わり、信にとって野戦の初陣である蛇甘平原の戦いが描かれる。
ただでさえ描写が難しい大規模合戦の模様を、コロナ下という厳しい状況下で、どのように撮影、編集しえたのか。楽しみでありながら不安でもある。ほどよい緊張感が劇場で解き放たれ、文句の言いようのない快感に変わることを期待したい。
本稿では、映画をより楽しく鑑賞するための予備知識として、古代中国で秦が頭ひとつ抜きん出た理由について考えてみたい。
時代は前240年代。中国は「戦国七雄」と称される七大国が割拠する状態にあった。西周王朝が滅び、春秋時代が始まる前770年頃には200以上あった国々が淘汰され、七つにまで絞り込まれたのである。