9月2日、日本電産は、関潤社長兼COO(最高執行責任者、61)が辞任し、後任に小部博志副会長(73)が就任する人事を発表した。
日産自動車副COOだった関氏は、永守重信会長(78)によって2020年4月にヘッドハンティングされ、2021年6月にはCEO(最高経営責任者)に就任。永守氏からは「後継者にふさわしい」と言われていた人物である。
経済ジャーナリストの森岡英樹氏はこう語る。
「当初は永守氏の後釜と目されていましたが、今年の4月に関氏がCOOに降格し、永守氏がCEOに復帰していた。その時点で関氏が辞めるのは既定路線になったと関係者の間でもみられていました」
8月25日に関氏が退任する方向だと報じられた際は市場への影響も大きく、同社の25日の株価は一時前日比3%ほど下落した。
日本電産は、創業者である永守氏が一代で築き上げた企業で、精密小型モーターの開発・製造では世界一のシェアを占める。売上高は1兆6180億円(2021年3月期)に達し、2030年度までには売上高10兆円を目指すとしている。
そんな日本を代表する企業で悩みとなってきたのが「ポスト永守」の不在だ。
同社の有価証券報告書には事業リスクとして「永守重信氏への依存」が挙げられているほどで、永守氏自身が惚れ込んだ人物を「後継者」として社外から引っ張ってきては、数年後にはその人物が退社・退任するということが繰り返されてきた。
「2013年にカルソニックカンセイ(現マレリ)から日本電産に入社した呉文精氏は、副社長に就任するなど後継者と目されていましたが、2015年に退社しました。その後も元シャープ社長の片山幹雄氏や日産出身の吉本浩之氏が幹部として入社して後任候補に挙がっていましたが、数年で退いている。いずれの人物も永守氏が求める理想像に届かなかったのだとされています」(森岡氏)