生涯の平均年収が500万円と仮定すると、65才(厚生年金に43年間加入)の年金額は193.7万円となる。2021年の日本人の平均寿命は、男性81.47才、女性が87.57才。年間200万円に満たない程度の年金で生活を続けるには、あまりにも老後が長すぎる。
不足する老後資金を補うべく、再雇用や再就職などで、定年後も働くのが当たり前の時代になっている。
そして並行して「お金に働いてもらうこと」も大切だ。資産の一部を運用に回しておけば、老後資金を増やせる可能性がグッと高まる。『定年後ずっと困らないお金の話』の著者でマネーコンサルタントの頼藤太希さんが言う。
「始めやすいのは、値動きのリスクを分散できる投資信託やETF(上場投資信託)です。個別の株式投資ではなく、1つの商品で数十から数百の株式や債券に分散投資できるので、初心者が少額から投資しやすい。中でも、代表的な株価指数に連動する『インデックス型』や、世界中の株式や債券などに分散投資できる『バランス型』は低コストで投資できるのでおすすめです」
効率的に増やすなら、利用してほしいのが「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」だ。
つみたてNISAは年40万円までの投資に対する運用益が20年間非課税になる。現在は1942年までの期限があるが、今後は制度の恒久化、または拡充の見込みだ。
iDeCoは節税効果が大きく、65才まで加入できるように制度が改正されている。
「退職金が初めての投資という人は多い。しかし、投資に絶対はありません。リスクの低い投資信託やETFであっても、資産のすべてを投じることは避けるべきです。退職金を受け取ったら、半分を預貯金、半分を投資に回し、投資のタイミングも複数回に分けるのがいいでしょう」(頼藤さん)
定年後のお金問題は、過度に焦る必要はない。自分の家庭にいくらお金が足りないのか、どんな仕事なら満足できるのか──いまから考えれば、無理のない選択ができるはずだ。
※女性セブン2022年10月13日号