中国企業が欧州市場に商機を見出そうとしている──。いま欧州ではインフレの加速が深刻だ。欧州連合統計局が発表した9月のユーロ圏CPIは前年同月比10%上昇となった。上昇率は市場予想を5か月連続で上回り、過去最高を更新した。
新型コロナ禍の後遺症によるサプライチェーンの回復の遅れや、対中貿易摩擦などの影響もあるが、なんといっても、主要なエネルギー源である天然ガス価格上昇の影響が大きい。
対ロシア制裁に加え、ロシアからの実質的な制裁返しが加わり、天然ガスの供給不足、価格上昇は深刻な問題だ。これから季節は冬に入るが、EU圏の寒冷地では天然ガスを燃料とするボイラーが多く使われている。天然ガス不足はそれこそ人命にかかわる大問題である。
この問題に対する打開策として今、ヒートポンプによる熱供給システムが注目されている。
ヒートポンプとはいわゆるエアコンの仕組みそのものである。冷房として使う場合は、ポンプを使って圧縮させた冷媒ガスが常圧に戻された時に発生する気化熱が室温を下げる。暖房として使う場合は、その逆のシステムが働く。天然ガスではなく、電気を使うことで暖を取ろうということだ。
そうした商機を見逃すまいと、一部中国メーカーが機敏に動いており、株式市場も敏感に反応している。
たとえば広東省の給湯機器メーカーである広東万和新電気(002543)の株価が急騰している。7月8日の終値は6.95元。その後、上昇トレンドが発生、9月28日の場中には高値15.69元まで上げており、この間の株価上昇率は126%に達している。
2022年6月中間期の業績は2.8%減収、5.7%減益であった。同社がガス給湯器の国内大手企業だが、需要が伸び悩んだことで業績はどちらかと言えば不振であった。ただ、エアコンの輸出がわずか(売上高で0.2%)だがあり、そのほとんどが欧州向けであった。伸び率は前年同期比143%増と急増しており、それが材料視されたようだ。