急速に進む円安。賃金は上がらず、ただ物価だけが上がっていく異常事態が続いている日本。今年3月までは1ドル=115円台が続いていたため、わずか半年で、日本円はドルに対して30円以上も下落したということになる。
いったい、この円安はどこまで続くのか。マーケットバンク代表の岡山憲史さんはこう語る。
「今年12月期の米企業の業績は、下方修正のトレンドにあります。アメリカの景気が減速してインフレ率が低下すれば、利上げにブレーキがかかるはずです。これを受けて、いまよりは円高に転じる可能性があります」
加えて、来年4月には日銀の黒田東彦総裁が退任する。この交代のタイミングで、政策変更を見越して、やや円高傾向になるという見方もある。国際認定テクニカルアナリストの横山利香さんが言う。
「来年の春頃までに、1ドル=130~120円台後半にまでは、回復する見込みがあります。ただし、このタイミングでの110円台までの回復は期待できません。また、円安が一段落したとしても、物価が大きく戻るとは考えにくい。家計の苦しさから現金を貯め込む人が多く、国内経済が回っていないうえ、外国人の爆買いによってモノ不足が起きれば、短期的にはさらなる物価高につながります」
苦境が続くと現金を貯め込む傾向は企業にも見て取れ、それが経済成長を阻害する要因にもつながっている。事実、日本企業の内部留保は総額500兆円を超えているとされる。
経済の先行きが不透明なのを理由に、賃上げや投資をせず、ただ手元にお金を余らせている企業がほとんどなのだ。
「アップルやフェイスブックはかつて、深刻なドル安の中で会社を大きくしていきました。当時のアメリカの状況は、いまの日本に似ているのです。だからこそ、この円安をうまく使える優秀な経営者が必要。本当の意味で日本経済が回復するのは、いまの10代~20代前半、すなわちZ世代が社会に出て活躍する、10年以上先の未来かもしれません」(横山さん)