利上げによる景気減速が懸念され足踏みを続ける米国経済。10月13日に発表された米国CPI(消費者物価指数)を見る限りは、インフレのピークアウトはまだ観測されず、先行きは予断を許さない状況だ。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんが、今後の米国経済を読み解くうえで重要な「3つの視点」について解説する。
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10月13日に発表された米国CPI(消費者物価指数)では、総合指数で前年同期比8.2%(前月比は-0.1%)とインフレ率の鈍化が見られました。しかし、より重要視されている食品とエネルギーを除く「CPIコア指数」では前年同月比6.6%(前月比+0.3%)と、インフレのピークアウトまでは確認できませんでした。
さらに10月14日に発表されたミシガン大学消費者態度指数に含まれる「1年先の期待インフレ率」は5.1%と市場予想を超えており、インフレ拡大の懸念がなお広がっています。
今回は、まだまだ不安の残る今後の米国の経済状況や株式市場を見ていく上で重要となる3つの視点について確認しておきましょう。
雇用統計など経済指標の急激な変化を警戒
先述のとおり、10月の米国CPIの発表によってインフレがピークアウトしていないという事実が明らかになりました。そのためFRB(連邦準備制度理事会)は急速な利上げを行うことで、過熱した経済に適度にブレーキをかけて、インフレの沈静化を図ろうとしています。
ただし、そのブレーキの踏み具合を誤ってしまうと、景気が急速に失速する「ハードランディング」となりかねません。これまでにも利上げによる景気減速懸念が強まるたびに、株式市場は大きな下落が続いてきました。
現段階では、サービス価格上昇などへの懸念もあって、CPI上昇率が予想を下回った場合は株式市場に好感されていますが、経済指標の急激な悪化が起こると一気にハードランディング懸念が高まることには警戒しなくてはいけません。
今後の重要な経済指標として11月4日に発表される「雇用統計」を中心として、多くの経済指標を見て、急激に悪化している傾向がないかを確認しておきましょう。
ターミナルレートの水準が変化するかどうか
ターミナルレートの変化もあわせて注視していくべきです。ターミナルレートとは、今回の米国の金融引締めサイクルにおける“利上げの最終着地点”のことを指します。
つまり、米国の政策金利は最大で何%まで引き上げられるのかということなのですが、今回のCPI発表後には、このターミナルレートの市場予想が4.5%から5%程度まで引き上げられました。
ターミナルレートの引き上げは、米長期金利の上昇につながり、株価にとっては下落圧力となります。
11月2日のFOMC(連邦公開市場委員会)にて発表される政策金利やパウエル議長の発言によって、再びターミナルレートが変化する可能性があります。必ず確認をしておきたい指標です。