サッカーW杯カタール大会で日本が歴史的勝利を収めた対スペイン戦(12月2日)。地上波ではフジテレビ系列で放送されたが、株式会社AbemaTVが運営する動画配信サービス『ABEMA』(以下、アベマ)の視聴数は2000万超を記録したという。会社や外出先、電車の移動中とどこでも視聴可能で、しかも無料。この“次世代型テレビ”が地上波テレビの地位を奪いつつある──。
サッカーW杯の全試合無料配信をきっかけにスマホでアベマを見始めたという60代男性が語る。
「アベマは聞いたことがあったけど、食わず嫌いで避けていました。ですが、実際に利用し始めたら、便利でびっくり! 好きな試合を選んで見ることもできるし、家にいなくても移動中に好きな番組を見られるので重宝しています」
AbemaTVは2015年にIT企業大手のサイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資で設立。2016年のアベマ開局以来、右肩上がりで成長を続け、現在はスマホアプリ版のダウンロード数が8300万を超えた。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が語る。
「アベマはテレビと違ってネットに接続していれば、パソコンやスマホ、タブレットなどでいつでも視聴できます。一般的にアベマの視聴者は20~30代のイメージですが、実態は全世代に満遍なく広がっている印象。最近は50代以降でも積極的に利用している方が多いと感じています」
利用方法はいたって簡単で、パソコンなら、アベマを検索してホームページにアクセスするだけ。スマホやタブレットなら、アプリをダウンロードすればより快適に視聴することができる。
ネットフリックスやHuluなど、海外大手配給を中心に映画やドラマなどを配信している会社は多いが、いずれも定額制でお手軽とは言いがたい。
しかし、アベマは無料(見逃し配信は有料)。現在、アベマが展開している専門チャンネルは27に及び、相撲にゴルフ、釣りや麻雀、将棋に競輪など幅広い。さらにスマホなどがあれば場所を選ばず、24時間365日楽しむことができるのだ。家で見るしかなかったテレビはいまや、アベマに取って代わられようとしている。
アベマが独自の進化を遂げていると分析するのはITジャーナリストの三上洋氏だ。
「アベマはいまや全国ネットのテレビ局に並ぶ影響力を持っている。将棋チャンネルや麻雀チャンネルなどのニッチなジャンルでは、メディア界において圧倒的な地位を確立しました」