画面に映った若い男女。彼がヒロインの耳元でささやく。「結婚しよう」。そして、ふたりは手を取り合って──ドラマのこんな場面を見て、思わず「夢と現実は違うのよ!」と口に出してツッコミたくなる人も少なくないはず。
現実はこうだ。ふとリビングを見れば、昼過ぎまで寝間着姿でソファに転がって、スマホゲームに熱中する夫。時々ブーッと大きな音を立てるオナラにも、もう慣れた。結婚を決めた頃は、ただ一緒にいるだけで、あんなにも幸せだったのに……。
2022年度の厚生労働省の人口動態統計特殊報告によれば、離婚件数自体は2002年をピークに年々減少しているが、それでも離婚する夫婦が10万組にも満たなかった1960年代の倍以上の水準を維持している。ベリーベスト法律事務所の弁護士・日原聡一郎さんが言う。
「離婚の件数自体は減少傾向ですが、これは人口と婚姻数の減少によるもの。司法統計によると、家庭裁判所に持ち込まれる離婚の件数は年々増加しています。これは『調停』という手続きが広く知られるようになったため。金銭面など条件でお互いに合意できなかったときに泣き寝入りせず、しっかりと話し合いをしたいと考える人が多くなったのでしょう」
日本の離婚事情は、私たちの知らないところで変化を続けているのだ。近頃よく耳にする「コロナ離婚」について、夫婦問題研究家の岡野あつこさんが解説する。
「新型コロナウイルスの蔓延で在宅勤務が増え、夫婦が顔を合わせる時間が長くなったことが大きな要因です。一緒に過ごす時間が急激に増えたことで、これまでは気づけなかったお互いの嫌な部分が浮き彫りになり、家庭での居心地が悪くなる人が増えているのです」(岡野さん・以下同)