政府・与党は行きすぎた節税を防ぐため、「タワーマンションの相続税評価額」を見直す検討を始めた。2023年度与党税制改正大綱に検討課題として盛り込む方針で、2024年度以降の制度改正を目指すとみられている。
相続を巡っては、生前贈与による遺産総額の圧縮という相続税対策にも制度変更のメスが入るとみられている。政府が相次いで節税策を封じようとしている格好だ。税理士法人レディング代表の木下勇人税理士が解説する。
「タワーマンションを利用することで、相続税対策が可能になっているのは事実です。不動産の相続税評価額は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに決まり、そもそも市場価格より割安です。とりわけタワマンの場合は眺望のいい高層階ほど市場価格が上がり、相続税評価額との乖離が大きくなります」
当然ながらタワーマンションは高層階ほど人気で価格が大きく上がるが、固定資産税評価額は高層階と低層階で大差がないため、それが相続税対策に利用されてきたわけだ。
評価額に基づいて相続税を払ってタワーマンションを相続し、その後に売却して現金化すれば、大幅な節税になるのだ。
「たとえば相続人が子供1人で、亡くなった父親から1億2000万円の現金を相続した場合、相続税は1820万円。ところが、その現金をタワーマンションに変えて相続すると、マンションの評価額が4000万円程度になって相続税が40万円で済んだりする。相続後にマンションが1億2000万円で売れれば、3%の仲介手数料は必要となるものの、ほとんど税金がかからない相続になるわけです」(木下氏)
節税効果が大きいため、不動産の活用は相続税対策の王道とされてきたが、そうしたなかで今年4月に下された最高裁判決も話題となった。父親が13億8700万円で購入した都内のマンション2棟を札幌市の男性らが相続したケースだ。
相続人は国税庁の財産評価基本通達に基づいて2棟の評価額を3億3300万円と算定し、購入時の銀行からの借り入れと相殺して相続税を0円として申告していたのだ。市場価格と比べて評価額が低すぎるとして国税当局は再評価・追徴課税。その是非が裁判で争われたが、最高裁で国税側が勝訴した。
「このケースでは、路線価などに基づく評価ではなく、国税側が個別の鑑定による再評価をして、億単位の追徴課税が認められています」(木下氏)