2024年度に迫る年金改悪の全貌が見えつつある。10月25日、社会保障審議会年金部会で、5年に一度行われる年金制度の改正の議論が行なわれた。改正案の内容を「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏が全3回にわたって解説してくれた。第3回のテーマは「パートタイマーの手取りが減る」──【全3回の第3回。第1回から読む】
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現在、パートタイムで働いている人は、正社員と比較して労働時間が4分の3を超えていれば厚生年金に加入することになります。正社員が週40時間(8時間×5日)なら週30時間以上働いてれば加入しなければなりません。
しかし、上記条件以外にも特定の条件が満たされれば、パートタイマーも厚生年金に加入することになっています。現在、厚生年金の加入要件は、【1】企業規模が100人超、【2】労働時間が週20時間以上、【3】賃金が月8.8万円以上、【4】2か月を越えて働く人、【5】ただし学生は除外──となっています。そして、【1】の要件は2024年10月から「50人超」となります。いま、厚生年金の適用拡大が進んでいるのです。
そして、年金部会ではさらに【1】を「1人以上」にしたうえで、【3】についても「8.8万円以上」をたとえば「5.8万円以上」にすることを検討しています。そうすると、最大で1050万人ものパートタイマーが新たに厚生年金の加入対象者になるとされています。
厚生年金に加入することになれば、保険料が引かれるため手取りが少なくなりますし、企業としても負担が増えることになります。ところが、政府は“パートタイマーでも年金の2階部分(厚生年金部分)が受け取れるようになるのでお得ですよ”という論調で適用基準の緩和を進めているのです。
なぜこんなことになっているのか。現実には、年金財政の逼迫が背景にあります。
年金制度は現役世代が年金受給世代の年金を負担する「世代間扶養」のシステムで運用されています。1950年では現役世代約12人で1人の高齢者を支えていたのに、 2017年では2.2人、2065年では1.3人になると予想されています。つまり、厚生年金保険料を払う人を増やさないと、将来的に年金制度を維持するのは不可能なのです。これが「パートタイマーの厚生年金適用拡大」の真の目的です。