国民の貯蓄を投資へと振り向けるべく、つみたてNISAなどをすすめている岸田政権。これほどまでに「貯蓄から投資へ」を推し進めるのは「もはやこれまでのように、国が国民のお金の面倒を見ることができなくなった」ということだろう。国民はもう、自分の力で資産を増やすしかないのだ。
「投資はギャンブルと同じ」「働かずにお金を増やせるわけがない」というのは極論だ。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、投資で大もうけしようと考えなければいいと話す。
「“1円でも安く買い、少しでも上がれば売らなければならない”と考えたり、“○○さんはこの銘柄で大もうけしたから”と、自分で考えずに人のまねをするから失敗するのです。投資の基本は『長期・分散・積立』。複数の銘柄に少しずつ分散して長期で積み立てていけばリスクを減らすことができ、いずれはプラスになる可能性が上がります」
つみたてNISAなら、長期・分散・積立投資がしやすい。『ほったらかし投資術』著者で経済評論家の山崎元さんは「岸田内閣の『新しい資本主義』はまったく評価できないが、唯一の成果が新NISAだ」と語る。
現在、つみたてNISAは年間40万円まで20年間、一般NISAは年間120万円まで5年間、非課税で運用できる。これが2024年に「無期限」になる。
さらに2024年には、2つの“進化系統合版”とも言える「新NISA」ができる。新NISAには、現行のつみたてNISAのような「つみたて投資枠」と、一般NISAのような「成長投資枠」がある。それぞれ、前者が年間120万円まで、後者が年間240万円まで、いずれも無期限で非課税運用が可能。合わせると、1人あたりの投資上限額は1800万円にもなる。
「現在はつみたてNISAと一般NISAの併用はできませんが、新NISAでは併用できます。しかも、利用枠上限の“再利用”ができることになりました。例えば、100万円投資した投資信託が150万円になったときに換金すると、元手の100万円は再び“非課税の利用枠”として使えるようになるのです」(山崎さん・以下同)
山崎さんは、できるだけ大きく制度を利用することをすすめる。制度が変更される2024年より前(2023年中)に現行のつみたてNISAか一般NISAを始めていれば、新旧どちらのNISAも運用することができるからだ(現行NISAで投資した分は、その非課税期間が終了するまで、新NISAの非課税枠とは別枠で利用できる。ただし、非課税期間終了後に新NISA口座に移管することはできない)。