「夫婦+子供」──それが家族の基本単位だと長く考えられてきた。しかし、その常識は大きく変わった。65歳以上の単身世帯が急増中だ。人生後半戦の重要課題である「相続」についても、“おひとりさま”になったらどうするか、真剣に考えなくてはならない。
遺言書は「書き直し」に
65歳以上の「ひとり暮らし」が、男女ともに急増している。1980年には約90万人だったのが、2020年には約670万人まで増えた。2040年には男女合わせて約890万人が単身世帯となることが予想されている。男女ともに65歳以上の人の20%超がひとり暮らしになるのだ。「高齢化」ばかりが注目されるが、その実態は「高齢者のおひとりさま化」とも言える。
もちろん、平均寿命の長い女性のほうが多いものの、男性で「おひとりさま老後」を過ごす人も、すでに約230万人にのぼる。生涯独身の人もいれば、配偶者と離別、死別して単身になる人もいる。
そうした人たちにとって大きな問題となるのが「相続」だ。
妻や夫に先立たれ、自分と子供が残された──まずはこのタイプの「おひとりさまの相続」が、考えるべきことの多いケースとなる。相続・贈与に詳しい山本宏税理士が解説する。
「夫婦が2人とも生きている状態では、基本的に“配偶者がいちばん多く相続する”というやり方が想定されます。遺言書がない場合に遺産の分け方の目安となる法定相続分で言えば、子供のいるケースで配偶者の法定相続分は2分の1。仮に妻に先立たれた場合、夫がすでに遺言書を用意していたとしても、いちばん多く相続するはずの妻が先に亡くなったわけですから、書き直しを余儀なくされます」
山本氏によれば夫婦のうち夫だけが遺言書を用意しているケースが多いというが、「妻が夫に先立たれた場合でも、夫から受け継いだ財産を子供たちにどう分けるかを考えなくてはならないので、やはり遺言書を作成する必要性に迫られる」(山本氏)という。