だが、遺言書はただ書き残しておけばいいというものではない。自分で作成する「自筆証書遺言」という方法はあるが、書き方や署名・押印の方法、財産目録の作成などには規定があり、不備があれば最悪の場合、遺言の内容が無効と見なされるケースもある。『阿部惠子行政書士事務所』代表の阿部惠子さんが続ける。
「そういったトラブルに見舞われないためにも、公証役場で公証人の指示を仰ぎながら『公正証書遺言』を作成するのが望ましい。トラブルを回避するのと同時に、遺言書の証明力が非常に高くなります。
加賀さんが《ふたりで司法書士の事務所に行った》と話すように、司法書士や行政書士のアドバイスを受けながら遺言書を作り、公証役場に提出する方法もあります」
遺産を国に渡すことになる
パートナーがおらず、かつ法定相続人になるような親族もいない「おひとりさま」だったとしても、「私とは関係ない話」とは言い切れない。
「法定相続人がおらず、かつ遺言書がない場合、遺産は国庫に入ることになります。平たく言うと国に渡すことになるわけです」(曽根さん・以下同)
今年1月、相続人がいないなどの理由で国庫に入った財産額が、2021年度に過去最高額の647億円にのぼったことが報じられた。行き場のない財産は10年前の倍近くに増えたという。
「国に渡すよりも、交流の深かった友人などに遺産を残したい場合、遺言書に書き記すことで相続は可能です。
遺言書を作成しなくても身の回りの世話をしてくれた人が『特別縁故者』として財産分与を受けられるケースもありますが、財産の一部に限られるうえ、弁護士に頼んで家庭裁判所に申請するなど、費用も手間も時間もかかるので、遺言書を作っておいた方が確実です」