賃貸物件から退去する際、入居者と大家の間でトラブルが発生することは珍しくない。自身が入居する前からあった傷の修繕費を大家から請求されてしまうというケースもあるようだ。そうなった場合、入居者は修繕費を払う必要があるのか? 実際の相談に回答する形で、賃貸物件のトラブル解決に定評のある司法書士・太田垣章子さんが、アドバイスする。
【相談】
10年住んだマンションの退去にあたり、管理会社ともめています。9年間は快適に住んでいたのですが、1年前に大家が変わり、それに伴い管理会社も別会社に。それからはひどいんです。共用部分の掃除はしてくれないし、植木の枝は伸び放題となって、マンション全体がすさんだ雰囲気になったのです。
こういう管理ならばもう住めないと退去を決め、管理会社の立ち合いのもと、現況確認をしてもらったところ、
「洗面台が割れて、パテで補修してあるから、修繕費の3万円を敷金から引きます」
と言われたんです。洗面台の傷は、10年前の入居時からあり、当時の管理会社との間で現況確認書を交わしていました。そのことを伝えると、
「現況確認書はこちらの手元にありません。あなたの前の賃借人は新築で入居し、半年しか住んでいなかったのだから、傷がつくはずがない」
と言い、私の非だと決めつけて譲りません。現況確認書は、入居後に私が確認し、前の管理会社宛てに返送しており、私の手元にありません。ですから、管理会社からないと言われれば、証拠がない状態です。なくしたのは管理会社なのに納得がいかず、反論すると、それからなめるように家中をチェックされ、もともとあったフローリングの傷や天井の照明焼けまで、敷金から引くと言われました。結局、敷金の20万円は戻ってこないことに。現況確認書がないため、確かに私の言い分は立証できません。請求されるまま払った方がいいのでしょうか。(45才女性・派遣社員)