敷金を返してもらえないことに納得いかない…（イラスト／なとみみわ）
賃貸物件では、退去時に入居者と大家の間でトラブルが発生することも少なくない。たとえば、「原状回復義務」を巡って両者の意見が対立することもある。もしも長年住んだ部屋から退去する際、大家が「原状回復義務」を主張し敷金を返してくれない場合、どう対応すればいいのだろうか……。実際の相談に対して回答する形で、OAG司法書士法人代表・太田垣章子さんが解説する。
【相談】
介護施設に入居するため、30年住んだアパートから退去することにしました。私は離婚していますし、子供もペットもいません。女のひとり暮らしですから、部屋はきれいな状態です。家具も少ないですし、たばこも吸いませんから、壁紙が黄ばんだり、床がへこんだ箇所もありませんでした。ですから、敷金の24万円は返金されると踏んで、介護施設の入居費用にと考えていたのですが……。
ところが、大家からの返事は「敷金の返金はなし」。納得がいかず、理由を聞くと、「賃借人（借主・住人）はね、室内を借りたときと同じ状態に戻して退去しなきゃいけないの。原状回復義務っていってね、これは義務なんだよ」の一点張り。
そこで、「原状回復義務」について調べてみました。国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』には、「通常の経年変化による損耗分は含まない」とありました。つまり賃借人が負担するのは、汚れや水漏れを放置するなどして物件を傷つけた部分のみ。私の部屋は、壁紙の日焼け、冷蔵庫焼けがあるくらいなので、これらは経年変化の範囲内。敷金を返してもらえる案件です。しかし、大家は「物件の状態を完全に元に戻す」ことまで要求してきます。どうすればいいでしょうか。（78才女性・無職）
