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キーエンスとオムロンで営業利益率が大きく異なる理由 財務諸表から見えてくる両社の違い

 さらに深く踏み込むと、両者のビジネスモデルの違いに行き着きます。オムロンは一般的な工場を持って製品をつくるメーカーなのに対し、キーエンスは「ファブレス」と言って、工場を持たないビジネスを行っているのです。だからこそ、キーエンスに工場などの有形固定資産はほとんどないのです。

 ただし、それだけでは営業利益率が高い理由にはなりません。商品を売るためには、当然それをどこかにつくってもらい、仕入れる必要があります。単に横流ししていただけでは、これほどまでに高い利益率を出すのは難しいでしょう。

 しかし、そこが腕の見せどころです。キーエンスという会社をよく見ると、営業に非常に力を入れていることが分かります。従業員一人当たり2000万円を超える平均年収を誇り(有価証券報告書に記載があります)、一人ひとりの営業が徹底的に顧客に対する「提案力」を磨くことで、顧客の要望にあった商品を開発側に提案し、顧客に納得して購入してもらうことで、結果として仕入価格に対して大幅な利ざやを乗せて顧客に商品を販売することができているのです。

キーエンスとオムロンの貸借対照表の比較(『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』より)

キーエンスとオムロンの貸借対照表の比較(『1社15分で本質をつかむ プロの企業分析』より)

 もちろん、オムロンもよい企業です。メーカーとして営業利益率が10%を超えているのは立派です。重要なのは、それぞれの「違い」を知ることです。オムロンは、優れた商品をつくることに重きを置いた企業であるように見えます。それに対し、キーエンスは顧客との接点に重きを置き、営業人員への投資を惜しみません。どちらも社会にとって必要な企業です。

 投資家的な見方をするのであれば、キーエンスは「資本効率」を意識した会社であることがよく分かります。大きな工場を抱えることは、資本効率の低下や財務リスクを抱える可能性があります。一方、顧客との接点に重きを置く「ファブレス」であれば、高い機動力で最も収益性の高い商品に絞ることができ、また大きなお金(資本)も必要としないことから、同じ元手からより多くの利益を生み出すことができるのです。もちろん、それができるのは優秀な営業社員がいるからであり、単なる「御用聞き」でやっていたのではこれほどまでに高い収益性を維持することは難しいでしょう。

 一方で、働く側の観点からすると、オムロンは製品そのものが好きな人に向いているでしょうし、キーエンスは高い給料に見合う相応のプレッシャーの中での営業成績達成が求められるでしょう。

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