大人になって「人見知り」を克服した人たちの気づき　「無理に自分から話そうとしなくても大丈夫」

　さらに、会社の厳しい規律と巧みなテクニックがNさんを変えた。

「最初に名刺を300枚渡され、『1週間で全部渡してこい』と言われて気が遠くなりましたが、腹をくくるしかありません。“恥をかいても死ぬわけじゃない”という気分でお客さんを回ると、あっという間に1件仕事が取れて、事務所に戻ると所長や先輩にベタ褒めされました。それですっかり自信がつきました。

　後々知ったことですが、いきなり仕事が取れたのは“仕込み”で、所長が私に自信をつけさせようとやったことだったんです。所長によれば、『人見知りだと言ってビビるヤツも、最初にパッと仕事が取れれば、二度と人見知りだとか言わなくなる』とか。本当に感謝しかありません」（Nさん）

“一人でいるのが格好良い”というスタンスで…

　現在、新聞社の営業マンとして働くTさん（40代／男性）は、中学でも高校でもほとんど友達が出来ずじまい。“一人でいるのが格好良い”というスタンスを装っていたが、本心では全然違った。

「本当は同級生とマンガやプロレスの話をしたかったんですが、話しかけ方が分からなかったんです。“いま話しかけたらウザがられるんじゃないか”とか、“いきなりこんな話をしたら変なヤツだと思われるんじゃないか”とかぐるぐる考えてしまって……。休み時間は机に突っ伏してウォークマンを聞いて、自分の世界に入っていました」（Tさん）

　自分の世界に浸るのも悪くないが、Tさんにはどうしても叶えたい夢があった。

「大学に入ったら絶対に彼女が欲しかったんです（笑）。そのためにはまず話しかけて、知り合いになる必要がある。ただ、その方法が分からないので、人のやり方を観察し、『次の授業なに？』とか『今日の授業ってどこからだっけ？』など、スムーズに話しかけるテクニックを研究しました。

　それを繰り返すうち、取っかかりさえ掴めば、そんなに自分から話そう話そうと意識しなくてもいいことに気付きました。自分から話しかける勇気がない人は、せめて誰かが話しかけてくれた時に丁寧に対応すればいいんじゃないでしょうか」（Tさん）