銀行に対する信用不安はどこまで拡大するのか。FRB(連邦準備制度理事会)は3月24日、9~15日までの1週間で米国銀行全体の預金額が984億ドル減少したと発表した。シリコンバレーバンク、シグネチャーバンクが破綻、ファーストパブリックバンクへの支援策が打ち出されるなど米国の一部の銀行に対する信用不安が高まったことで、経営基盤の弱い中小金融機関から1200億ドルの預金が引き出された。
欧州ではクレディ・スイスが経営不振に陥り19日、UBSによって救済されることになったが、国際的な自己資本比率規制(バーゼルIII)において自己資本(Tier1)に相当する同行発行のAT1債(Additional Tier 1債)が無価値となった。銀行の財務安全性に対する信頼が損なわれかねない事件であり、それが欧州大手行であるドイツ銀行の経営不安につながり、24日の株価は8.5%安と大きく売り込まれた。
昨年春先をピークに緩やかに減っていた米国商業銀行の預金額が、秋口から減少ペースを加速させている。昨年6月から量的引き締めが開始されたが、それに急ピッチの利上げが重なった。銀行の収益構造を考えると、金利上昇時は平均預金金利よりも平均貸出金利の上昇の方が早いため、一般に利上げは業績にプラスに寄与する。しかし、それも行き過ぎてしまうと景気悪化、不良債権発生リスクを高めてしまう。銀行経営は預金者の厚い信頼の上に成り立っている。短期で調達した資金を長期で運用するといった収益モデルである以上、預金引き出しが顕著になれば途端に経営は危機に陥る。
今回のグローバル金融機関の経営不安は米国が発信源であり、米国政府の適切な対応を期待したいところだ。
預金者の立場から考えると、銀行預金すらリスクを意識しなければならないのなら、資産をより分散させるしかない。最近の金価格や、米国債価格の上昇(金利の下落)にはこうした預金者のリスク回避行動が背景にあると考えられる。
これまで最も安全だと考えられていた米国や、スイスなどの銀行において信用不安が発生している以上、富裕層は水面下で預金を他国に移そうとしているはずだ。