「異次元の少子化対策」と繰り返す岸田文雄・首相。「わが国の社会経済の存立基盤を揺るがす、待ったなしの課題だ」と息巻くが、行き当たりばったりの選挙対策で私たちの社会保障を脅かそうとしている──。
「異次元の少子化対策」の「叩き台」は、【1】児童手当の所得制限撤廃、支給期間を高校卒業まで延長、【2】出産費用の補助拡大、公的保険適用を検討、【3】大学生などへの給付型奨学金の対象拡大、【4】男女とも育児休業給付を10割支給、【5】保育士の増員などが柱となっているが、いずれも効果が薄いとの指摘が出ている。
社会保障論が専門の経済学者、鈴木亘・学習院大学経済学部教授は必要なのはピンポイントの対策だと語る。
「現在のトレンドは『晩婚化』『晩産化』『非婚化』ですから、出生数を増やすのは非常に難しいが、即効性のある対策としては、例えば“コロナ卒業婚キャンペーン”が考えられます。出生動向基本調査では、コロナ期間に女性の同棲率が倍増している。この層に、時限的に結婚費用や家賃の一部を補助する。子どもを産みたくないカップルに1万円出しても動かないが、同棲中のカップルの背中を押してあげれば効果が期待できます。そうしたピンポイントの対策を増やしていくことが重要なのです」
ところが、岸田首相の異次元の少子化対策は総花的でそうしたピンポイントの政策は全くない。
「本気じゃないんですよ。ピンポイントで効果のある政策を打ち出すと、一部の層だけに恩恵が及ぶので、他の層からは“不公平だ”と不満が高まる。それは選挙にマイナスに働く。今回の岸田政権の政策は本来的な少子化対策ではなく、出生数増加につながらなくても幅広く給付金をバラ撒こうという選挙対策と言っていいでしょう」(同前)