選挙後に消費増税の“密約”
そして北村氏が最も警戒すべきと指摘するのが「マクロ経済スライド」という年金減額システムの期間延長だ。この4月から年金は3年ぶりに引き上げられ、夫婦2人のモデル世帯の年金額は月額4889円上がる。
だが、年金の額面は大きく増えたように見えても、物価がそれ以上に上昇しているため、同じものは買えない。実質的には年金は目減りしている。
年金の引き上げ幅を物価上昇率より低く抑え、国民にわからないように年金を実質的に減額していくのがマクロ経済スライドという仕組みだ。
「現在の制度では厚生年金のスライドは2025年に終わり、それ以降は減らされないことになっている。それが次の改正でスライドを2033年まで延長する案が検討されている。改正されると、厚労省の標準モデル世帯の夫の厚生年金の額は現行制度より月額2万円も減らされる計算になります」(北村氏)
岸田首相は自分の打ち上げた少子化対策で出生数が劇的に改善し、年金崩壊危機が食い止められるなどとは思っていないから、今のうちに「年金半減」に向けた改悪を進めようとしている。
そのうえ、統一地方選が終われば、年金生活者狙い撃ちとなる消費増税が待ち受けている。
「少子化対策予算の倍増には少なくとも年5兆円ほどの新たな財源が必要になるが、政府の方針で、少子化の財源は消費税でまかなうことになっている。歳出拡大に厳しい目を向ける財務省が岸田首相に児童手当増額など選挙向けのバラマキを認めたのは、選挙後に必ず消費税率引き上げの議論を進めるという暗黙の了解があるからです」(自民党中堅議員)
少子化対策とは、岸田首相と財務省が手を組んだ国民騙し討ち増税の口実でもある。
岸田首相が「政治の師」と仰ぐ池田勇人・首相はかつて「貧乏人は麦を食え」と放言したが、岸田氏は少子化対策と年金改革、消費増税で“高齢者は米も麦も食うな”と言っているに等しい。
※週刊ポスト2023年4月21日号