世界的なインフレや今後の景気後退への懸念があるなか、世界の富裕層は資産運用について、どのように考え、実践しているのか。新刊『個人投資家もマネできる 世界の富裕層がお金を増やしている方法』が話題の、元ファンドマネージャー・志村暢彦氏が解説する。
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2022年、コロナ禍による世界的な金融緩和への反動やサプライチェーン(供給網)の問題、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するエネルギー・食料危機といった要因により、世界経済ではインフレーション(インフレ)が起こりました。そして、景気後退(リセッション)への懸念も強まっています。
そんないま、「歴史は繰り返す」という視点から、あらためて注目されているのが「株式投資」です。
インフレ状態のもとでは、商品やサービスの値段が上がります。すると、企業の売上高が増えやすくなり、コスト管理に優れていたり、コストの価格転嫁が可能な企業は業績が上向き、株価の上昇が期待できます。
また、インフレを抑制するために主要国の政策金利が上がると、株価にも影響します。なぜなら、金利が上がると企業の借金(借入金)の支払利息が増えますし、成長株の価値を算定するにはマイナス材料となることから、株価は下がると考えられるからです。
でも、各国の中央銀行が物価の過熱を防ぎつつ、景気が腰折れしないように金利をコントロールできたら、株価は上昇トレンドに転じやすくなります。事実、米国の過去の利上げ局面では、米国株の指標となる「S&P500種株価指数」や「ニューヨーク・ダウ平均株価」は上昇しているのです。
ちょっと難しい話になってしまったかもしれませんね。結局のところ、どこの株を買えばいいのでしょうか? そこが読者のみなさんの関心事でしょう。
数年前に比べると、日本でも株式投資は、より身近な存在になってきました。日本株だけではなく、ここ数年の“米国株ブーム”の影響で、米国株を運用する個人投資家もかなり増えました。
しかし、株式投資の環境は急速に変化するもの。特に少なからずの「富裕層」と呼ばれる投資家たちは、その変化に即応して、米国株だけでも日本株だけでもなく、国際分散(グローバル投資)の傾向を加速させているのです。