逆に、コロナ禍で行われた超積極的な緩和政策、つまりマクロ的な要因でお金がじゃぶじゃぶと供給された結果、行き場を失ったお金が株式市場に流れ込み、株価が上がった局面もありました。マクロ的な要因のみでの株価上昇であれば、むしろ利益確定したほうが賢明かもしれません。業績と株価の上下動をマクロ的視点・ミクロ的視点に分けて見極める癖をつけることにより、投資の精度が高まっていきます。
マクロ的な要因は、いろいろとありますが、目を向けるべきは、世界経済の要石(キーストーン)である米国経済の動向です。
昔から「米国がくしゃみをすると、日本が風邪をひく」といわれるように、米国の動向をウォッチしていれば、それに追随する日本経済の動向は予測できます。米国の株式市場が下落すると日本の株式市場も下がりやすいですし、米国市場が上昇すると日本市場も上がりやすいです。日本経済だけではありません。世界経済全体が米国経済の影響を受けやすいため、グローバル企業の業績や株価も、米国のマクロ的な要因に左右されやすいのです。
米国のマクロ的な要因はいろいろとありますが、わかりやすく3つに絞って注目していきましょう。それは「【1】金利」「【2】物価」「【3】雇用」です。順番に解説しましょう。
マクロの3つのポイント
【1】金利は、米国の長期金利(10年もの国債金利)が、どの水準にあるのかがポイントになります。今後上がるのか、下がるのかという方向性の見極めも求められます。さらに加えると、長期金利と短期金利の差(これを「長短金利スプレッド」といいます)にも目を向けましょう。これが景気の先行きを反映するからです。
短期金利の水準は、本来なら長期金利よりも低いはずですが(定期預金でも、短期より長期のほうが金利はいいですね)、短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」が生じると、それから半年から1年後に景気後退入りを招く傾向にあるといわれています。
なぜなら、短期金利の急騰は、過度な金融不安や政策変動などで起こるケースが多いからです。逆イールドの代表は、「3か月もの米財務省短期証券」の金利が、「10年もの国債」の金利を上回ることです。
政策金利を動かすのは、各国の中央銀行――日本では日本銀行、米国ではFRB(連邦準備制度理事会)、ユーロ圏ではECB(欧州中央銀行)です。その中央銀行が、金利を動かす鍵となるのが、次に説明する【2】物価と【3】雇用の状況なのです。
【2】物価では、FRBが物価指標として重視し、米商務省が毎月末に公表している米国の「個人消費支出(PCE)デフレーター」「消費者物価指数(CPI)」が、もっともわかりやすい指数です。
これは米国の個人消費の物価動向を示しています。世界第1位を誇る米国のGDPの約7割は、個人消費が占めているのです。
【3】雇用では、「賃金の伸び率」と「失業率」を重視します。米労働省労働統計局が毎月第1金曜日に公表する雇用統計で、「就業者数」「平均時給」「失業率」などが確認できます。
失業率が低くて賃金が伸びていれば、消費に回るお金が増えて景気は上向くでしょう。逆に、失業率が高くて賃金も伸びないと消費が冷え込み、金融緩和的な政策がとられる余地が生じるため、マクロ的な要因から株価上昇も考えられます。
ここまで紹介してきた米国の【1】金利、【2】物価、【3】雇用に関する情報は、ネット検索で容易に得られますし、日ごろから日本経済新聞やテレビ東京系の経済情報番組『Newsモーニングサテライト』『ワールドビジネスサテライト』などをチェックしていれば、自ずと目にします。