快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた

三菱・デリカミニ「目標の4倍」受注 人気の要因は“本物感”と“絶妙なネーミング”か

半円形のヘッドライトと力強いブラックのボディパーツが、小さな軽自動車に「ワイルド感」を与えている

半円形のヘッドライトと力強いブラックのボディパーツが、小さな軽自動車に「ワイルド感」を与えている

 クルマ好きの祭典としてすっかり定着した今年1月の「東京オートサロン2023」で初披露され、大きな注目を集めていた軽自動車が、三菱・デリカミニだ。三菱のアウトドアイメージを牽引するモデルとして人気のミニバン、デリカD:5のデザインテイストをまとったエクステリアが最大の売りだ。5月25日の発売を前にして、月間販売目標台数2500台の約4倍近い受注(執筆時点)を受けているという。自動車ライター・佐藤篤司氏による連載「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は、三菱デリカ・デリカに実際に試乗して、その人気の理由を探った。

強力なライバルの中で生き抜くために必要なもの

 三菱自動車と日産自動車は、両社共同のプロジェクトとして設立したジョイントベンチャー「NMKV」で、軽自動車の企画や開発を進めてきました。今話題の軽自動車のBEV、日産サクラや三菱eKクロスEVも、その中から誕生しました。基本的な骨格などは共通しながらも、外観のデザインや細かな装備などは、各社の意向に任されています。結果としてサクラとeKクロスEVとではフロントマスクをはじめとしたデザインも違った形で発表されました。すると発表からわずか3週間の受注状況では、三菱 eKクロスEVが3400台、日産 サクラが1万1000台を突破するという人気ぶりでスタートしました。この結果だけを見るとサクラはeKクロスEVの約3倍売れています。

 ここまでの話の流れから言えば「サクラのデザインの方が好まれたから」とか「サクラがカッコいい」となりそうですが、一概にそうとは言えないのです。実はここで考えなければいけないのが、まずは三菱と日産の販売拠点の差。現在、三菱は約600店舗、対する日産は約2100店舗と、その差はほぼ3.5倍。この拠点数と販売力の差がそのまま台数の差となったとも言えます。そこにモデル構成や価格の違い、さらにはブランドなど、いくつかの理由が加わることで、兄弟車であっても販売台数に差が出ました。

 こうした売れ行きの傾向は、今回の主役、デリカミニのベースとなっている三菱eK スペースシリーズと、兄弟車の日産ルークスの間でも起きていました。販売力の差がそのまま販売台数に影響するという動かしがたい現実を、「デザイン等の商品力で少しでも縮めることができないか」と考えるのは、企業として当然のこと。さらに言えばこの2台が属しているのはスーパーハイトワゴンというカテゴリー。ライバルにはホンダ・Nボックス、ダイハツ・タント、スズキ・スペーシアといった軽自動車市場を牽引する人気車種ばかり。三菱にとっては「対日産」のことばかりを気にしているわけにはいきません。

 すべてのライバルは、軽自動車のサイズ枠、全長3.4m以下×全幅1.48m以下×全高2.0m以下のギリギリまで攻め込んで、室内スペースを確保しています。結果として、どのクルマも背が高くボディサイドは切り立った壁のごとくとなり、シルエットは似たり寄ったり。そんな激戦のマーケットで個性を主張するにはフロントマスクとリアスタイルで勝負することになります。

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