田代尚機のチャイナ・リサーチ

アメリカの制裁・禁輸措置を逆手に成長路線を走る中国半導体産業の強かさ

アメリカの政策が中国経済にどう影響するか(半導体をするバイデン大統領。Getty Images)

アメリカの政策が中国経済にどう影響するか(半導体をするバイデン大統領。Getty Images)

欧米企業が中国市場から撤退することで草刈り場に

 グローバルでは関連セクター全体で逆境が続く予想だが、市場関係者たちの中国本土事業に関する見通しは大きく異なるようだ。

 まず、長期的な成長を促すと同時に、欧米諸国による中国半導体産業の封じ込め政策に対抗すべく、コストを低減させるための税制優遇措置、開発を促進させるための補助金、国家産業基金による投資といった資金援助など多方面にわたる政策が中央、地方を問わず、打ち出されている。

 また、中国では特に、半導体需要を拡大させるとみられる自動運転、メタバース、IoT(モノのインターネット)などにおける開発競争が激しい。最近ではChatGPTの成功により、AI関連技術の開発競争が更に激しさを増している。後者では、AIチップについて大量のメモリー容量、高い計算処理能力が求められ、それによる半導体の開発需要が大きく高まっている。

 半導体製造装置はいうまでもない。ただ、国家による支援が頼りというわけではない。欧米の強力なライバルが自ら国内市場から撤退してくれる。そこは中国半導体装置メーカーにとって絶好の草刈り場となる。

 米国は、最先端の装置に限り中国への輸出を禁止する措置を採るというが、中国側はそれを逆手に、最先端ではない装置に関して、自ら進んで国内代替を加速させる。ユーザーサイドでも、国産半導体を優遇する動きが活発化するだろう。中国では国有企業、国家資本の入る企業はもちろんだが、民間企業でも経営陣のほとんどが共産党員である。共産党の決める方針は経済主体に深く浸透する。国家資本主義が見えにくい形で経済全体を覆っている。

 自国での製造が難しい最先端の装置についても、中国は調達してしまうのではなかろうか。半導体、半導体製造装置のグローバルな流通を漏れなく把握するのは決して簡単ではない。あくまで自社の利益を守ろうとする日米欧企業の面従腹背に、米国政府は悩まされる可能性がある。

 中国本土の株式市場の相場付きや市場関係者たちの業界見通しなどを分析する限りでは、中国半導体産業が封じ込められるようには到底見られないがどうだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。