自動車産業に限った危機ではない
自国市場の規模の小さな国の企業が、規模の経済が大きく働く自動車産業において、大手と伍して発展していくためには、輸出市場の確保は最重要課題である。
2022年における国別国内自動車販売台数(OICAより、以下同様)をみると、第1位は中国で2686万台であった。販売台数について、その中国を100%とすると、米国は53%、インドは18%、日本は16%であり、以下ドイツ、ブラジル、イギリス、フランスと続き、韓国は第9位で6%、販売台数は168万3657台となっている。
一方、2022年における国別自動車生産台数を調べると、中国、米国、日本、インドに続き韓国が第5位にランクされており、その生産台数は375万7049台に達している。つまり、韓国自動車メーカーは国内市場の2.23倍に当たる量を生産し、量産効果を出すことでコスト競争力を付け、同時に成長に必要不可欠な多額の研究開発費を捻出している。
販売台数トップ5国の自動車自給率(生産台数/販売台数)について、順に並べてみると中国は1.01、米国は0.71、インドは1.15、日本は1.87、ドイツは1.24である。もし、米国が、間もなく化石燃料自動車にとってかわるであろう新エネルギー自動車について国内企業を保護し、結果的に自給率が1近くまで上昇するのであれば、韓国自動車メーカーは存亡の危機に瀕することになる。
自給率を見ればわかる通り日本にとっても、これは“対岸の火事”ではない。
さらに、この種の危機は自動車産業に限られるわけではない。一国全体の危機、更にはグローバル経済の危機にもつながりかねない。
国土が狭く、人口の小さい国が豊かな物質文明を謳歌するためには、活発な国際貿易、自由貿易が不可欠だ。特に、エネルギー、鉱物資源、食糧などを物理的に自給できないほとんどの小国にとって、貿易の不調は増幅された形で経済の不調に直結する。