一方でほとんどキャンプなどに出掛けることもなく、街乗りが主体となったとしても、こうした個性を主張できるアクセントは邪魔にはなりません。トレッキングブーツが立派なシティファッションとして通用していることを考えれば、キャンプのライトユーザーにとっても、このさり気ないけど本格派という佇まいはなんら問題がなく、いやむしろコンパクトであっても、存在感が光る佇まいを「美味しい」と感じる部分かもしれません。
ただ、このクラスには強力なライバルが多数います。トヨタ・ヤリスクロス、ホンダ・ヴェゼル、日産・キックス、スズキ・ジムニーシエラなどなど、国産をざっと見ただけでも魅力的なライバルがひしめいています。この中でいったいスバルが抜きん出るために、どんな仕掛けを用意しているのでしょう。
本当の意味でのお買い得感とは
スバルのアドバンスといえば安全支援システムの「アイサイト」と、半世紀以上にわたって磨き続けてきた4WD技術、そして重心高の低い水平対向エンジンということになります。
まず今回採用されたアイサイトは「アイサイト史上最強」と謳っています。スバルの安全にとって最先端の安全技術というわけです。これまでシステムの“目”となっていたのはステレオカメラ。人間がものを見るような感覚で前方の様子を確認して、リスクを予感し、そして衝突などを回避できるようにしていました。今回はこのステレオカメラの間にもうひとつ、より広角に見ることができる“第3の目”を加えたのです。これまで以上にカメラで認識できる範囲が広がりました。
さらにクルマの前後左右に4個のカメラとレーダーも備わっていて360度センシングも実現しています。これをもってアイサイト史上最強と謳っているのですが、実際に運転しても、そのきめ細やかな監視能力に、安心度はどんどん上がります。もちろん機械任せはよくありませんが、人間のうっかりミスをかなりカバーしてくれることは確実です。
そして4WDシステムです。クロストレックにはFF(前輪駆動)のモデルもあり、こちらも重量が軽い分だけ軽快で楽しい走りを体験できました。ただ、アウトドアスポーツ、とくにウインタースポーツの趣味とするなら、少し価格は高くなっても4WD(AWD)が確実におすすめ。残念ながらまだ雪道を走ったことはないのですが、びしょびしょに濡れた雨天時の路面は経験があります。この時は路面に落ち葉も多く、油断するとアッという間にスリップ、スピンという状況でした。クロストレックのAWDは4輪をしっかり制御しながら走ってくれるので、こちらはただ無理をせず普通にステアリングを切り、そして普通にブレーキを踏むだけ。走行時に姿勢は少しも破綻することなく、平穏に走りきります。
さらにこの時感じた安定感は、重心高の低い水平対向4気筒エンジンのお陰もあります。エンジニアがこだわった開発コンセプトの中心に置いたのが、実は安全と、そして走りの“Fun”だったのです。クロストレックの主要市場であるアメリカでも、さらに日本でも「楽しさ」を誰もが心から求めているという確信のもと、とにかく乗ってみて経験すれば楽しさが分かるという仕上げにしているそうです。こうした言葉はどのメーカーも主張するのですが、それが実際どういうものなのかが明確に分かったのが、クロストレックの走りでした。