貿易総額では世界最大の中国だが、まだ人民元の国際的地位は低いように見える。SWIFT(国際銀行間通信協会)によると、3月の世界の貿易決済における人民元のシェアは2.26%に過ぎない。ドルは41.74%、ユーロは32.64%、円は4.78%で、人民元は第5位に甘んじている。
人民元を国際通貨という観点から見れば、依然としてドルに遠く及ばないのが現状だが、その最大の要因は金融資本取引を自由化していないからであろう。
外国人が中国の上場株式、債券を購入するには、香港市場のストックコネクト制度を通すか、当局の許可を得て適格機関投資家となり、一定の制限の中で取引を行うしか方法がない。海外の機関、個人が人民元を所有した場合、その運用手段や、為替変動リスクのヘッジなどの点で、ドルと比べて大きく見劣りすることが人民元の国際化を妨げている。
もっとも、中国政府はこうした人民元の弱点を解消すべく努力を続けている。最近の一例をあげれば、中国人民銀行は4月28日、海外投資家に対して香港市場を通して本土の金融派生商品への投資を解禁した(同時に、本土投資家に対する香港の金融派生商品への投資も解禁)。これによって、海外の企業、個人は、例えば金利スワップ取引が可能となり、金利変動リスクの軽減を図ることができるようになった。
また最近では、人民元所有に関する各国の態度に際立った変化がみられる。
アルゼンチンのマサ経済相は4月26日、中国からの輸入商品の支払いについてドル建て決済を停止し、人民元建て決済を行うと発表した。
マレーシアのアンワル首相は4月5日、国会において「マレーシアは米ドルに依存し続ける理由はない」と発言、中央銀行は既に中国との間でリンギットと人民元による貿易決済を検討し始めている。ブラジル政府は3月29日、中国との貿易に関して、ドルを介する取引を止め、直接、レアルか人民元で貿易を行うことを決めている。
その他、インドネシア、イラン、ロシアなど多くの国家が人民元を貿易決済通貨として広く使用し始めている。