新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、5月8日から5類に引き下げられ、本格的に“コロナ前”の生活に戻ろうしている。そうしたなか、多くのコンサートの現場では、感染防止のための措置が緩和され、“声出し解禁”が当たり前になってきて、マスクの着用も観客の判断に任せるというケースが増えている。
かつてのように自由にコンサートを楽しめる状況が戻りつつあるなかで、近頃、数多く報道されているのが、コンサートやスポーツイベントなどのチケットの不正転売事件だ。
2019年6月に施行されたチケット不正転売禁止法によって、チケットの不正転売と転売目的のチケット入手が禁止され、罰則も設けられた。同法違反の容疑で逮捕されるケースもニュースで数多く報じられている。エンタメ事情に詳しいライターの大塚ナギサ氏はこう話す。
「チケット不正転売禁止法で主に取り締まられているのは、継続的に定価を超える価格でチケット転売をしている業者や個人です。人気のアーティストのコンサートは、基本的にファンクラブ先行でチケットが販売され、申込みが多い場合は抽選になります。
転売目的でファンクラブに入会し、チケットに申し込むという業者や個人もいるため、抽選がより厳しいものとなり、本当にコンサートに行きたいと熱望しているファンに、チケットが行き届かないという現状があるわけです。チケット不正転売禁止法は、そういった状況を改善し、本当にコンサートに行きたいと願うファンが定価でチケットを入手できるようにする目的で施行されました」
チケット不正転売禁止法の施行から約4年が経過しているが、実際に本当のファンがコンサートに行きやすい状況ができているのだろうか。
「入場時でのIDチェックを行うコンサートやスマホと紐付いたデジタルチケットを使用するコンサートでは、紙のチケットに比べて転売が難しい。そういったコンサートにおいてはたしかに転売業者は減っていると思います。しかし、転売者が購入者にスマホを貸したり、IDを偽造したりして入場するケースもあるようで、不正転売を完全に排除するには至っていません。
そして、紙のチケットの場合も、実際に逮捕者がたくさん出ていることから分かる通り、不正転売が撲滅されたとは言えない状況です。とはいえ、単純に友人からチケットを譲り受けるケースなどもあり、不正転売か否かを見抜くのが難しいという現状があるのも事実ですね」(大塚氏)