飲食店の中には“ツケ”がきくお店もあるが、料金の未払いがそのままトラブルに発展するケースも少なくない。客からのツケの返済が滞った場合、それを回収するために店側はどうすればよいか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
女性読者です。半年前からクラブのホステスに転職。不慣れで大変ですが、なにより困っているのは客のツケ。合計で13万円も私の売掛になっています。その人に連絡しても応答ナシ。キャバクラの場合、こういうトラブルばかりなので、店側は売掛を認めていないそうですが、クラブはいまでもツケの文化が残っています。どうすれば客のツケを回収できますか。
【回答】
方策は3つ。1つ目は、客にしつこく請求すること。住所や勤務先がわかれば、請求書を送るのも必要で、酒手を踏み倒す輩からは、法的な強制力で取り立てるしかないでしょう。もっとも、13万円程度で弁護士に頼るのは費用倒れ。
こういう場合、客の住所を管轄する簡易裁判所に相談し、自分で支払督促の手続をとることも考えられますが、相手に支払能力がなければ、回収は不可能です。
2つ目は、店の売掛請求を拒否する理論武装。ホステスが客の飲食代を自分の売掛にしたり、客のツケの保証をするのは、その客との取引を自分の責任で行なえる環境や条件が必要です。そのようなホステスは、店には所属するものの、極端にいえば場所を借りているだけで、店での接客は自分個人の営業として行なっているため、売上は自分が責任をもって、店に支払うというもの。この営業が可能なのは経験豊富で、自分を指名する客を抱え、店とは独立した営業主体になれるホステスです。