子供が悪気なくやったことが原因で何らかの損害が出た場合、たとえばその子供の親に賠償請求をすることはできるのだろうか──弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
わが家で鳥を飼っているのですが、先日、小学生の子供の友達Aくんが遊びにきて、鳥を逃がしてしまいました。鳥かごの扉を何度も開けていたので、「鳥が逃げるからダメだよ」と注意したにもかかわらず、その後も扉の開け閉めを繰り返していて、鳥が逃げました。 鳥は約2万円で購入したものです。Aくんの親に弁償してもらうことはできますか。(45才・主婦)
【回答】
未成年者は、他人に損害を与えても「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません」(民法712条)。この自己の行為の責任を弁識する知能を「責任能力」といいます。
加害行為の態様により一概にはいえませんが、「小学生だと責任能力がない」と判断した裁判例が少なくありません。特に小学校低学年であれば責任能力はないと解されていますから、Aくんの責任は追及できません。
しかしその場合、「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」(714条)ので、親権者である親が代わって賠償します。
例外として、親が注意監督を怠らなかったことを証明すれば、責任を免れることができます。しかし、親は子供の性格や日頃の行いを知っているのが普通です。家庭外の行為で直接監視できない場合でも、未成年者の親権者は子の行動について、他人に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されています。