自転車で走行中に飛び出してきた子供を避けるために負傷してしまった場合、治療費などを子供の保護者などに請求することはできるのだろうか──。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
自転車通学をしている高校生の息子が、突然飛び出してきた小学生を避けようとして転倒しました。腕や足に大きな擦り傷ができて、制服のズボンも破けてしまいました。幸い大事には至りませんでしたが、治療代や制服代で2万円ほどかかりました。飛び出してきた小学生の親に少しでも損害を請求することはできますか。(広島県・46才・主婦)
【回答】
事故発生の状況により一概にはいえませんが、程度は別にして賠償を求めてもよいと思います。自転車と歩行者の事故で自転車側に損害が生じた場合、歩行者に注意義務に違反する過失があれば、歩行者は不法行為の加害者になり、自転車側(被害者)の損害を賠償する責任が生じます。
しかし、被害者にも過失があれば、その程度に応じて過失相殺により損害の額から被害者の負担する分が控除され、加害者が賠償すべき額が算定されます。
子供の飛び出しが不法行為になるかどうかですが、左右を確認しないで道路に飛び出すのは危険なことで、通常は道路上への飛び出しにより事故が起きれば過失があるといえるでしょう。本件では衝突していませんが、息子さんが避けなければぶつかっていたとすると、回避行動をとった結果の転倒事故は子供の飛び出しが原因といえますから、子供の過失は否定できないと思います。