楽天を支える「楽天カード」は2808万枚を発行し、クレジットカードによるショッピング取扱高は18兆円を超え、国内シェアトップの23.4%を占める(2022年12月期)。
「PayPay経済圏を構築するなら、背骨となるのがクレジットカードです。PayPayの認知度が高まり、ブランドが浸透した今、勝負を仕掛けてきたと考えられます」(関氏)
巨大企業による全面対決が始まろうとしているというのだ。
グループの売上高ではソフトバンクが大きく先行するものの、ネットショッピングや金融などサービスの取扱高やシェアでは楽天グループが上回る(別掲図)。カード事業の拡充により、ソフトバンクの完全勝利となるのだろうか。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美氏は、両社のユーザーの利便性に着目し、「楽天の牙城を崩すのは容易ではない」と指摘する。
「楽天は『楽天証券』『楽天トラベル』などとブランド名が統一されていてネットショッピングに慣れていない人でも使いやすいうえに、サービスを使えば使うほどポイント還元率がわかりやすくアップします。また、楽天ポイント加盟店で楽天のスマホ決済サービス『楽天ペイ』を使って支払うと、楽天ペイの支払い分と商品購入分のポイントが両方つく『ポイント二重取り』ができます。
こうしたシステムにより、ポイント集めが捗りますが、PayPayは二重取りができないなどユーザーのメリットが少ない。その差は簡単には埋まらないでしょう。それどころか、利便性が悪くなりPayPayから楽天ペイに乗り換えるユーザーも少なくないのでは」
経済ジャーナリストの大西康之氏もこう見る。
「ソフトバンクグループの置かれた状況は厳しい。PayPayの親会社にあたるZホールディングスの2022年度第4四半期の最終損益は13億円の赤字でした。
PayPayはこれまで、店舗への手数料無料や他社クレジットカード利用時の手数料の支払いなどで収益性が悪かった。さらにここ数年、孫氏はグループの投資事業『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』に計14兆円を注ぎ込んだが、思うような成果はあがっていない。財務面での余裕がなくなり、緊縮路線に向かわざるを得なくなるのだと僕は見ている」