作成時に「録画」も有効な対策
では、具体的にはどう対策すべきか。まず大前提として、相続人が遺言の内容にかかわらず、最低限の権利として主張できる「遺留分(注:被相続人の配偶者など一定の相続人に保障されている最低限の相続分)」を踏まえた遺言書をつくることが重要だ。そのうえで寺林氏は「基本的には公正証書遺言が望ましい」と言う。
「公証人という有資格者の第三者が立ち会い、身分確認をしたうえで作成するので、書式の不備や、偽造が起きにくいのが利点です。ただ、自筆証書遺言に比べて書き直しが大変なので、財産内容、相続人への気持ちが変わりやすい人などは注意が必要でしょう。また、規定の手数料以外にも弁護士や司法書士への依頼料など数十万円の費用がかかるので、相続財産自体が少ない人は費用倒れになってしまいがちです」
自筆証書遺言を選ぶ場合は、法務局での保管制度を利用することで、書類のチェックを受けることができ、不備は生じにくい。
また、認知症が絡むトラブルを避けるには、遺言書の正当性を証明するための備えをしておくことも大切だ。
「遺言書の作成と同時に、医師に一筆もらうなどして本人の判断能力があると証明する書類を添付することが有効な対策と考えられています。認知症テストを受けるのもいいでしょう。可能であれば、医師立ち会いの下で作成するのもよいかもしれません。
そうした依頼を医師にするのが難しければ、法務局で『成年後見登記されていないことの証明書』を遺言書作成の近接した日付で取るのも手です。成年後見人がついていないということは、それだけ意思能力がはっきりしていたということの“ある程度”の証明になると思われます」(寺林氏)
ほかに、本人が遺言書を作成する場面を動画で記録しておくことなども対策として有効だという。
せっかくの遺言書が“争族”のきっかけになることのないよう、万全の対策をしたい。
※週刊ポスト2023年5月26日号