昭和の時代から高収入かつグローバルな職業としてエリート会社員の代名詞だった「総合商社」。令和に入って業績は益々絶好調で、“この世の春”を迎えている。
資源価格の上昇や大幅な円安を背景に業績が好調で、昨年度の決算で三菱商事、三井物産は総合商社として初めて純利益が1兆円を突破した。
4月に来日した“投資の神様”ことウォーレン・バフェット氏は、この2社と伊藤忠商事、住友商事、丸紅の「5大商社」の株式保有比率を各社7.4%まで高めたと明言。バフェット氏が総合商社に注目した理由は何か。『経済界』編集局長の関慎夫氏が語る。
「『えんぴつからロケットまで』と言われるほど商材の領域が広く、投資を含む事業開発まで行なう総合商社のような業態は世界に例がない。海外でも『Sogo Shosha』の名称が通じるほどで、競争相手が少ない唯一無二のビジネスのためバフェット氏の目に留まったのでしょう」
1970年代、山崎豊子の小説『不毛地帯』は伊藤忠商事元会長の瀬島龍三氏がモデルとされ、自衛隊の戦闘機選定や石油採掘プロジェクトなど総合商社の多彩な仕事を描いた。
だが、総合商社のビジネスモデルには大きな変化があった。ジャーナリストの森岡英樹氏が語る。
「以前は貿易の仲介と事業投資が2本柱だったが、現在は後者に重心が移った。石油など資源だけでなく、ソフトバンクグループの投資会社『ビジョン・ファンド』のように様々な事業やスタートアップに時間をかけて投資し、巨額の利益を得る態勢に変わりました。また三菱のローソン、伊藤忠のファミリーマートなど消費者相手の“川下ビジネス”にも注力している」