国内で少子高齢化が進む中、単身高齢者も増加傾向に。単身高齢者には「賃貸物件を借りにくい」などの不安もある。身寄りのない高齢者などは、どうすればよいだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が考察する。
【相談】
70歳になる年金生活者、居住のことが心配です。秋に宅地開発が行なわれる予定で、住み続けているアパートを退室しなければいけなくなりました。そのため、慣れない不動産屋巡り。ただ、どの店も高齢者の私に、いい顔をしてくれません。やはり、身寄りのない高齢者は、賃貸マンションに住めませんか。
【回答】
高齢者に貸したがらない理由としては、【1】高齢者の収入が少ないので、家賃の支払いが不安。【2】家賃滞納で居座られれば、裁判手続きが必要で、手間と時間がかかり、回収できない損が増えるだけ。【3】裁判を経て立ち退かせるとしても、高齢者を追い立てるのは、人情において忍びない。【4】高齢者は青壮年に比べ、身体が弱く、僅かな段差でも転んでケガをし、寝たきりになり、理由の【1】に拍車をかける。【5】平均余命が少ないので、死亡の割合が高く、単身高齢者だと孤独死になる可能性も高く、発見が遅れると居住区画は悲惨な状態を帯び、修復に莫大な費用がかかる場合もある……などが挙げられます。
これらの不安を解消しない限りは、民間賃貸業者による高齢者向け借家の提供の拡大は期待できそうもありません。