ルールは厳しいが住民たちにとっては安心感も
過去にはMr.Childrenの桜井和寿が新築する自宅に防音部屋を作ろうとして、住民から苦情が来たと報じられたこともあるほどそのルールは例外がなく厳しい。しかし、規則のもとで生活する住民たちにとってはこの上なく生活しやすい土地のようだ。田園調布の住宅街を歩く、高島屋のバラが描かれた紙袋を手にしたマダムに声を掛けると、こんな話をしてくれた。
「ここに暮らしてもう60年になります。子供たちも独立して、いまは夫とふたり暮らし。週2回のジム通いのほか、歌舞伎を見るのと音楽を聴きにいくのが趣味です。コロナ禍で外出を控えていたので、今年になってようやく行けるようになったのが、本当にうれしくて。この街も高齢化してきたけれど、子供が小さい頃はご近所のかたとお互いの家を頻繁に行き来していましたし、いまも挨拶は欠かしません」
田園調布に住み始めて10年ほど経ったという30代女性もこう話す。
「長く住んでいらっしゃるかたが多いここでは私は“まだ10年”。小学生と保育園の子供がいますが、家族で住むにはいい環境ですね。お店が近くにないので、ちょっと何かを買いに、というときは不便かもしれないけれど……。変な人がいないという安心感は抜群ですし、日中は娘が保育園に行っている間に家のことをしたり、ママ友とブランチしたりして快適に過ごすことができます」
行き交う人は誰もが穏やかな表情で、目が合うと会釈してくれる。町内会には道路に接する「敷地の長さの2分の1以上は樹木を植える」というルールもあり、それも緑豊かで落ち着いた街の雰囲気に一役買っている。住民から話を聞いている間にも、どこからともなくウグイスの声が聞こえてきた。
※女性セブン2023年6月15日号