たたずまいが“一般人”と違う
車移動が前提だからか、閑静な街には、歩いている住民はほとんどいない。
「高級な自家用車を所有している人が多いのはもちろんのこと、お抱え運転手付きの人も多いですし、早めに免許を返納して、タクシーを使う人も多い。駅のタクシー乗り場に並んでいる姿を見ただけで、六麓荘にお住まいの人はすぐにわかります。決してブランド品をたくさん身につけているとか、派手だというわけではないのですが、たたずまいが“一般人”と違う。オーラがあるんです」(前出・タクシー運転手)
六麓荘町の住民は、タクシー利用においても独自の「ルール」があると話す。
「彼らは決して“急いでください”と言わないんです。普通なら渋滞があると“抜け道を行って”“○時までに到着したい”なんて言われることが多いですが、六麓荘の人は“なるべく大きな道でゆっくり行ってください”とおっしゃる。徹底的に安全志向だし、乗り慣れていらっしゃる印象もある。町内にコンビニがないからと新聞を買うためだけにタクシーを利用される人もいますね」(前出・タクシー運転手)
時にはチップをはずむ乗客もいるというが、そのやり方も規格外だ。
「お正月にはみなさん、お年玉をくださるんです。金額は5000円か1万円が多いです。元日から1月5日くらいの間にご乗車いただいたかたの半分くらいは、お年玉をくださいました」(前出・タクシー運転手)
彼らは一体どんな暮らしをしているのか。ようやく住民を見つけて声をかけるも、「取材ですか? ご苦労様です」とこちらをねぎらってくれた後は決まって「何も答えられないんです」の一点ばり。だが、声をかけ続けると「少しだけなら……」と話してくれた女性がいた。
「うちは主人がここ出身で、住んで長いです。新しい住民のかたもいらっしゃるけれど、街自体が大きく変わることはないと思う。ここにはマンションがないし、昔から暮らしているかたも多いので、安心感はありますね。買い物? お取り寄せもよくしますし、外商も利用していますけれど、あんまりそういうことをお話しするのもね……(苦笑)。主人の親の代から利用してます。だけどもちろんスーパーにも行きますよ」(女性住民)
ただしスーパーといっても、彼らが利用しているのは、エコバッグがメルカリで高値で取引されるほどブランド化し、地元では“特権階級”と噂される高級店、『いかりスーパー』だ。やはりどこまでも規格外な街なのだ。
※女性セブン2023年6月15日号