高層階から“下界”を見下ろし、都心からも最寄り駅からもアクセス抜群。フロントにはコンシェルジュが常駐し、パーティールームも充実──ドラマや映画でリッチな生活の象徴として描かれてきたタワーマンション。しかしそれは、われわれ“大衆”の大いなる勘違いだったようだ。富裕層専門のファイナンシャルプランナー・江上治さんがこう話す。
「一口にお金持ちといっても、その規模から収入源までさまざまなタイプがいます。都心部のタワーマンションを買って住んでいる人に多いのは、夫婦共働きで世帯年収2000万円を稼ぐいわゆる“パワーカップル”です。
確かに彼らは高年収ではあるものの、マンションを買うための借り入れで、資産をそれほど持っていないケースもある。例えば貯金が1億1000万円あったとしても、1億円のローンを組んでいれば純資産は1000万円しかないという計算になります」
資産額から負債額を差し引いた「純資産」が1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」と呼ぶ。野村総合研究所が今年3月に発表した調査によれば、日本の総世帯数約5191万のうち富裕層は全国に約140万世帯、超富裕層となると9万世帯しかない。わずか0.17%だ。江上さんの顧客である超富裕層にはタワーマンションの住人はひとりもいない。
「実はタワーマンションは通勤時にエレベーターが混んで足止めを食らったり、地震や災害時に停電が起きて階段を使わざるを得なかったりと、お金持ちが嫌うリスクが至るところにある。
エレベーターホールやエントランスで不特定多数の人と顔を合わせることを嫌がる人も少なくありません。資産を狙う人にだまされたり、人の紹介やお金の貸し借りを頼まれたりするリスクがあるためです。だから彼らはそうしたリスクを減らすために、あえて不便な場所に一戸建てを建てて暮らしている。実は日本中のあちこちにそうした“お金持ちの住む街”があるのです」(江上さん)