実際は「炎上」とまでは言えない案件がほとんど
そういったケースは意外と多いため、私はまず、次のように助言します。
「『炎上している』というのは、人によって解釈が異なる。炎上を焚きつけたいネットメディアは『炎上中』『批判の声殺到』などと書きたがるでしょうが、大抵の場合は、無視しても問題ない。私はこれを『炎上』とは捉えていません」
炎上なんてものは、批判に慣れてない人からすれば5件の批判的意見を見ただけで「炎上した!」とビビるわけです。一方、1000件あっても「これくらい平常運転」と考える人・企業もいる。
訴訟案件になるような大きな問題ならともかく、多くは「これは炎上とまでは言えない。一部の人を満足させられなかっただけ」というもの。であるならば、当事者の中では「これからも私達のスタンスを支持してくれる方々を満足させるように努力しよう」と考えればいいのです。現に、批判の声を書き込む人も、ひとつのイシューへの怒りを爆発させたら、せいぜい4日ほどでそのエネルギーは続かなくなり、別のものにターゲットを移すもの。
とはいっても、批判が来るのを極力避けるため制作するコンテンツ内容の精査は必要ですし、想定できるリスクは事前に関係者で共有しておいた方がいい。この手のリスクマネジメントの仕事は、さすがにまだAIはできないでしょうから、まだまだニーズがあるのだと思います。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『捨て去る技術 40代からのセミリタイア』(インターナショナル新書)。