「人生は喜ばせ合戦」と考える
どんな仕事でも、TPOを見極めて、的確なタイミングで交渉をすることで、成功率を上げることができます。そのためには、日ごろから相手の置かれている状況やコンディションに目を向けて、信頼関係を築いておくことが大切です。人と信頼関係を作るためには、長い時間と大変な労力が必要ですが、その努力を惜しまないことが、結果的には仕事を短くやることにつながります。
相手の状況に目を向けるのは、顔色を伺って迎合するためではありません。「どうすれば、相手を困らせないか?」とか、「どうすれば、相手が気持ちよく考えることができるか?」を知ることが目的です。相手に対する細やかな配慮を積み重ねていくことが、信頼関係に結びつきます。
私は人付き合いや仕事で大事なのは、相手の置かれた状況や心境に配慮できるような優しさとか、思いやりの気持ちを持つことだと思っています。もっと言えば、「人生は喜ばせ合戦」だと考えています。
打算や計算で相手を動かそうとするのではなく、相手が気持ちよく動けるような配慮を心がければ、相手もハッピーになり、結果的に自分もハッピーになるというイメージです。
先に紹介した遊園地の例は、自分の愛する子供だから許されることであって、大人同士が相対する職場では、意識的に回避する必要があります。相手が寝不足などでコンディションが悪いときに話をして、その反応の悪さに腹を立てていたのではネガティブの連鎖を招く危険性があります。
自分の都合だけで「お構いなし」に行動していたのでは、上司や周囲の人たちと信頼関係が結べないだけでなく、仕事に支障が出てしまいます。人と人とのコミュニケーションは、いくら小手先のテクニックを覚えても、十分に機能することはありません。その根底に、相手に対する気遣いがあってこそ、物事がスムーズに進み、仕事を短くやることができるのです。
雑談しながら相手の本音を早く引き出す
仕事を短くやるためには雑談も大いに活用すべきです。
会議室などでお互いに構えた雰囲気で話をしても、なかなか相手の本音を聞き出すことはできません。私は、「少し雑談してもいいですか?」とか、「ちょっと雑談させてください」と伝えて、場所を選ばず、カジュアルな雰囲気の中で自然に合意形成ができるように、雑談をしながら仕事をする……ことを日ごろから意識しています。
仮に合意形成までいかなくても、相手の考え方を知るだけでも十分な情報になりますから、私の会社の社員にも、「雑談をする暇があるなら、雑談で仕事をするといいよ」と、まるでトンチ問答のようなことを推奨しています。
仕事が速い人や仕事で成果を出している人を見ていると、雑談を上手に活用していることが多いようです。
雑談には、相手の緊張感や警戒心を緩めて、お互いのガードを下げる効果がありますから、心理的な距離が縮まるだけでなく、本音や本心を伝えやすい雰囲気を作り出すことができます。それが仕事を短くやることや成果につながるのだと思います。