私のような“ダメ人間”を動かせるか
Aさんとまた話したい。そう思った私は、次の入金日にできるだけのお金をAさんに渡して仮の保険証を発行してもらい、その次の月からは5000円以上を着々と払って、数か月後には健康保険証が「仮」ではなくなったの。
その後、Aさんは私の住んでいる地区の担当を外れて、町でバッタリ会えばお茶を飲む関係になったの。そうしているうちに私はギャンブル沼から抜け出してちゃんと病院にかかることもできた。
いま思えば、本当に危機一髪だったんだよね。健康保険証を失った私は、社会の絶壁に指の先だけかけている状態。いつ泥沼に落ちてもおかしくない。それを救ってくれたのは間違いなくAさんよ。
「自業自得じゃないの」という批判を承知であえて言えば、Aさんはお役所仕事を超えた“やる気の人”。そのやる気が、もうどうでもいいやとふてくされていた私を前に向かせてくれたのよね。
で、マイナンバー制度だけど、滑り出しはいろいろあっても、回り出せば行政サービスがスムーズになると私は期待しているんだよね。けれど、どんなにいいシステムでも、私のようなダメな人間を動かすのは“お役所仕事よりちょっとやる気のある人”なんだよね。それが言いたくて、私の身の恥をさらしてみました。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2023年7月6日号