旧統一教会から霊感商法などで金銭的被害を負った被害者らは、弁護団を通して教団側と集団交渉を行っている。7月6日には第四次交渉がおこなわれた。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が解説する。
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7月6日、全国統一教会被害対策弁護団は、司法記者クラブで会見を行い、旧統一教会に対して第四次の集団交渉の申し入れを行ったことを明らかにしました。阿部克臣弁護士によると、今回の通知人は9名(夫婦1組)で、財産的損害と慰謝料を合わせて約9億6000万円ということです。
「この中には、非常に高額な財産損害として、7億5000万円の方もいらっしゃいます。ただし、ご本人は亡くなっておられるので、ご家族の相続人の方が請求しております」(阿部弁護士、以下同)
この事例はひどいもので、身内の信者が、この信者の方の口座から勝手に1年ほどお金を引き出し続けて、7億5000万円もの金額になったそうです。それで相続人である方が損害賠償の請求をしています。
信者が勝手にお金を引き出す事例はこれまでも報告されています。
第二次の集団交渉に参加している橋田達夫さんの元妻は熱心な旧統一教会の信者で1億円もの献金をして、すでに離婚されています。その元妻のもとで2世として過ごした長男が自殺するという、辛い経験をなさっています。
橋田さんによると、不動産を高知県が収用した時(県は)誤って橋田さんの元奥さんの口座にお金を振り込みました。すると「2000万円は自分のお金だといって、元妻は勝手に献金した」ということです。それが財産的損害の請求になっています。
元信者として、教団の内情をつぶさにみてきた者として、こうした高額な献金に際しては、必ず所属する教会への報告・連絡・相談が必要なはずです。教義上、神様の前に信者はすべてを包み隠さず話さなくてはならないからです。
当然、こうした勝手なお金の持ち出しを教団が知らないはずはありません。それどころか、今回の件は1年ほどにわたっての引き出しですので、財産事情を把握しての組織的な献金指示をしていた可能性すら疑われます。そのあたりの献金の実態は、集団交渉によって暴かれていくことになるかと思います。
これまで全国統一教会被害対策弁護団は四次にわたり、集団交渉を行ってきています。すでに被害者数は109人(通知人103人)となり、合計で約35億8000万円になっています。