人の不安につけこみ、高額な壺や印鑑を言葉巧みに売りつける「霊感商法」が社会問題となっている。11月14日には、旧統一教会に限らず、幅広く霊感商法の相談を受け付ける「霊感商法等対応ダイヤル」が、日本司法支援センター(法テラス)に開設される。そもそも霊感商法とはどういった手口なのか。なぜ人は騙されてしまうのか。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が、自身の体験も交えて解説する。
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マインドコントロールと聞くと「ああ、カルト団体がよく使う手だね」と他人事に思う人もいるかもしれません。でも、手口をよく知っておかないと、知らないうちに自分自身がその罠にはまって、多額のお金を取られることがあります。その手法は巧妙で、霊感商法で多くの人が被害に遭ったことからもわかります。
10月に単行本『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』を上梓しましたが、宗教に対してあれだけ警戒していた私自身が、よもや旧統一教会に入信して、約10年にわたって信者であり続けるとは思ってもいませんでした。
時間をかけてマインドコントロールの魔の手から逃れて、ジャーナリストとして、世の中の詐欺や悪質商法を見続ける中で、教団が使っていた手口が多くの悪徳業者のところで使われていたことがわかりました。教団が先なのか、悪徳業者自体がすでにそのノウハウを持っていたのかはわかりませんが、いずれにしても、人の心をからめとり、お金をとる術はすでに世の中に広がっています。
モノを売ると思わせず、その人に近づく
旧統一教会の信者らが行った最も有名な手口は、霊感商法でした。これは、霊能師や占い師を騙った人物が、手相や姓名判断、家系図を鑑定しながら「あなたには、悪霊がついていて、先祖の悪因縁がある」と言って、高額な壺や印鑑、多宝塔などを売りつける商法です。
この手口の巧妙さは、モノを売ると思わせず、その人に近づくという点です。マインドコントロールする上での第一歩は、真の目的を告げずに相手の心に入り込むことです。
〈旧統一教会では、壺などを売る霊能師・占い師(説得役)と、勧誘場所に連れていく人(連れ込み役)は別の人物が行うようになっています。役割分担をしっかりさせています〉(『信じる者は、ダマされる。』より。以下〈〉内同)