50年後には、日本の総人口が現在の7割に減少する。2020年の国勢調査によると日本の人口は1億2615万人だったが、2070年には8700万人程度にまで減少するとされる。一方で、日本人の平均寿命は延び、高齢化は進む。総人口における65歳以上の割合は2020年の28.6%から2070年には38.7%にまで上昇する。人口減と高齢化──それに伴い、年金制度はどうなっていくのだろうか。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
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現在の厚生老齢年金の受給開始年齢は、「65歳」となっています。これは、“改悪”を積み重ねてきた結果と言えます。年金制度の未来を予測するために、これまでどのようにして受給開始年齢が引き上げられてきたか、その歴史を振り返っていきましょう。
厚生年金制度ができたのは、1944年(昭和19年)。当時、受給開始年齢は「55歳」でした。この時は終戦直前で平均寿命のデータがありませんが、1947年(昭和22年)のデータを見ると、男性が50.06歳、女性が53.96歳でした。織田信長が好んでいたとされる「人間50年」という言葉がありますが、この頃はまだ平均寿命は50歳そこそこだったのです。
注目していただきたいのは、当時は年金の受給開始年齢が平均寿命より高いこと。年金をもらう前に亡くなってもおかしくなかったということです。
現在の制度の原型となる厚生年金保険法に改正されたのは1954年(昭和29年)です。この改正により、報酬比例部分(いわゆる2階部分)に加えて定額部分(1階部分)が設けられました。同時に男性の受給開始年齢は1957年度(昭和32年度)から4年ごとに1歳ずつ引き上げられ、55歳から「60歳」へと引き上げられることとなりました。この当時の男性の平均寿命は63.41歳、女性は67.69歳でした。その頃には「年金をもらってから亡くなる」というスキームになったわけです。
その後、日本人の平均寿命は延び、1973年(昭和48)年には男性が70.70歳、女性は76.02歳となります。女性の場合は55歳から受給できていたので、20年以上も年金をもらえる計算になります。