何らかの事情で自立していないきょうだいがいた場合、どうやって支えればいいのだろうか──。コラムニストでイラストレーターの吉田潮さん(51才)には、3才年上の仲のいい姉がいる。ところが、吉田さんはそんな姉を、「実は、ふがいないきょうだいでもあるんです」と漏らす。というのも、最近までほぼ引きこもりだったのだ。
「姉はイラストに関して天才的な才能を持っているんです。それなのに、そのスキルを仕事に生かさず、いつまでも親に光熱費や居住維持費などの生活の基盤となる費用を出してもらっているんです」(吉田さん・以下同)
吉田さんの姉は高校に入学してまもなく、単身海外へ留学し、以降約20年を海外で過ごしてきた。日本に帰国したのは15年前の2008年、姉が39才のときだ。父親が所有する千葉のログハウスにひとりで暮らし、イラストレーターとして活動し始めた。
ところがそれから8年後、急に仕事をしなくなり、ネットゲームなどに明け暮れる日々が続いた。
「それまで親に払っていた家賃3万円はおろか、水道光熱費も払わなくなり、生活の基盤を年金暮らしの親に負担してもらうようになったんです。そのうえ、私に車検代金を無心してきました」
そのときの吉田さんは、(姉は浪費しているわけではなく、ただ収入がないから生活に困っているだけ)とか、(これまでに弱みを見せてこなかった姉からの頼みだし、よほど困窮しているのだろう)などと姉を正当化し、100万円を貸すことにした。
すると、それに味をしめたのか、国民健康保険料の支払い、車の買い替え費用など次々に頼まれ、結局、合わせて230万円ほど貸してしまった。
その後、姉は介護施設で入浴介助のパートを始めたが、それでも住居費を出せるほどの収入に至らず、イラストの仕事も積極的にしようとしない。吉田さんが知人のツテで仕事を紹介したが──。
「姉は生活費がないのに、気が乗らない案件は断るんです。そんなことで、親が死んだ後、どうやって生きていくのか。ただでさえ姉には、睡眠時無呼吸症候群や高血圧症といった持病もあります。もしこれらの病が悪化して長患いしたら、どうやって医療費や介護費を払うのか。将来への危機感がなく、行き当たりばったりで生きる姉に、歯がゆさを感じました」
姉を尊敬していたからこそ、落胆も大きかったのだろう。