「日本一」になるタイミングで手に入れた邸宅
長年、ソニーを取材してきた 『経済界』編集局長の関慎夫氏はこう振り返る。
「目黒区にあった盛田邸には私自身、若い頃から何度も通ったところでした。そこが今、ビッグモーターの社長宅になっていたとは知りませんでした。
もともとは盛田昭夫さん名義の土地で、1999年に亡くなった際に家族が相続しています。その後、妻の良子さんが2015年に亡くなられて、その翌年にビッグモーターの兼重社長の資産管理会社『ビッグアセット』が土地を取得したようです。
その頃の盛田家を振り返ってみると、1990年代から様々に行なっていた事業で躓き、盛田家が保有するソニー株を失い、2013年には盛田国際教育振興財団といった関連財団も解散し、そうした資産処理がひと段落した頃のように映ります。自宅のあったこの土地は、盛田家の事情もあっての売却のように見えます。
一方のビッグモーターは、ホームページによれば『6年連続買取日本一』と謳っているので、ちょうどその『日本一』になるころのタイミングで、ビッグモーター創業者が、盛田昭夫さんの邸宅を手に入れたということになりますね」
わずか一代で世界的企業を創り上げた戦後日本を代表する名経営者の盛田昭夫氏と、地方で個人創業し、全国区の中古車販売大手へと急成長させながら不祥事が続々と発覚している渦中の兼重宏行氏──。2人の経営者の盛衰が、高級住宅街に構えた「自宅」で交差していた。(了)