元気と余裕がなければ楽しめない
家族が大病を患ったことで推し活から離れていったのは、メーカー勤務のBさん(40代男性)だ。10代の頃からアニメファンだったBさんは、ずっと女性声優を対象に推し活を楽しんでいた。
「5年ほど前に、妻が乳がんを患ったんです。それで生活が大きく変わりました」(Bさん)
早期発見だったため命に関わるようなものではなかったが、治療は簡単ではなかったという。
「妻は手術後、再発防止のための放射線治療もしました。早期とはいえ治療は大変そうで、私としてもどうしても落ち込みがちになってしまいました。
気晴らしに声優のイベントに行っても、どうしても妻の病気が気になって楽しめない。現場に行けば行くほど精神的にきつくなったんです。結局、声優に関する情報は自ら遮断するようになりました」(Bさん)
落ち込んでいるときこそ“推し”の存在が支えになる人もいるだろうが、Bさんの場合は、そうではなかった。
「たしかに、推しに元気をもらうこともたくさんあります。でも、オタク活動をするのも元気と余裕が必要なんですよね。推し活を楽しめていること自体が幸せだったんだなと、気づきました」(Bさん)