渡航先がカンボジアやラオスだったら炎上しなかった?
政治家の「庶民感覚欠如」には、すさまじい批判感情が巻き起こります。何度も繰り返されてきたこの事実を、自民党はなぜ学ばないのでしょうか。2012年には、総裁選に出馬した安倍晋三氏が決起の会食で3500円のカツカレーを食べて批判された。庶民感覚からすれば「カツカレー、贅沢だけど950円ぐらいですよねw」となるからです。あとは総理時代の麻生太郎氏がカップラーメンの値段を「400円ぐらい?」と言った時も批判を浴びました。当時は128円ぐらいが普通でした。
今回の「視察」ですが、たとえば渡航先が、バングラデシュやカンボジアやラオスだったらここまで叩かれていないでしょう。何しろおフランスなわけですから、ランチで4000円とかは当たり前、ディナーはもっとするでしょう。ホテルだって雑魚寝の民宿やカプセルホテルなワケもない。こうなると、自民党に対してよからぬ感情を持っている人からすれば、絶好の叩く材料になるわけです。さらに今井絵理子氏は過去に不倫報道もあったりして、そもそもの可燃性が高い。今回の炎上騒動は見事なまでの「役満的要素」を備えていたのです。
マイナンバーカード問題とフランス視察問題は自民党にとって逆風になることでしょう。この騒動が発覚する前は、「秋にも解散総選挙があるのでは?」とも言われていましたが、さすがにこの状況で解散に打って出たら議席は減りかねないので、延期になるのでは。
今年1月には、岸田文雄首相がフランスに行った際、当時秘書官だった息子の翔太郎氏がプライベートな件で大使館員を利用したとも報じられ、批判されました。今回の炎上騒動は、その時とまったく同じ構図といえるでしょう。
それにしても、松川氏を含めた3人の議員の「エッフェル塔ポーズ」。あれは史上稀に見る「人をイラつかせる写真」ですね。撮影したカメラマンの腕前にあっぱれです!
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『捨て去る技術 40代からのセミリタイア』(インターナショナル新書)。