【2】市場予想を下回るようになった米国CPI
新型コロナウイルスの影響、ロシア・ウクライナの情勢悪化、そして急激なインフレに対する金融引き締めなど、2022年の相場には多くの変動要因が絡み合っていました。この中で、特に予想が難しかったのがインフレ動向で、米国の代表的な物価指標であるCPI(消費者物価指数)には多くの投資家が注目していました。
2022年のCPIを見てみると、全12回中7回が市場予想を超える結果となり、発表直後の金融市場を大きく動かしていました。
しかし、2023年、ここまでの全8回の発表のうち市場予想を超えたのはわずか1回だけ。逆に、予想を下回る結果が5ヶ月連続で続いています。これはFRB(連邦準備制度理事会)のインフレ抑制策が着実に効果を発揮している証拠で、物価上昇を完全にコントロールしきれなかった2022年と比べると、不確定要素が減少してきていると考えられるのではないでしょうか。
【3】VIX指数の安定
米国には、S&P500のオプションのボラティリティを示すVIX指数があります。この指数は「恐怖指数」とも称され、20を超えると市場の暴落を予兆するとされています。
2023年3月にシリコンバレー銀行が経営破綻した直後は20の警戒水準を超えていたVIX指数ですが、その後の約5ヶ月間はほとんど20を下回って推移しています。特に6月以降は、12~16という、さらに安定した水準での推移が続いています。これもまた、市場の不確定要素が減少してきたことを示唆しているのではないでしょうか。
これらの視点から、米国株式市場にはまだ上昇の余地が残されていると私は考えています。もちろん、未知のリスクが発生する可能性もありますが、基本的には長期的な上昇トレンドの中の短期的な調整である可能性が高いと見ます。