住宅ジャーナリストの山下和之氏はこう言う。
「居住用でありながら、専用の豪華施設を使うことで迎賓館的な役割も果たせる。今の金持ちが求めるものは、他にはないという特別感です。それが優越感に繋がっていく」
ペントハウスは、売り出し方も特殊だ。
「普通の物件のように申し込めるようにはなっていません。不動産会社側が高額物件を過去に購入したことがある超一流顧客を並べた“資産家リスト”から1人ずつ順に『購入しませんか?』と声をかけていく。株などで儲けた投資家よりも、大企業の経営者や大物起業家など安定した収入がある資産家を選ぶ傾向があります」(榊氏)
内覧せずに決めた
前出の不動産関係者によると、「ペントハウスを除く1戸の販売価格の平均は20億円」だという。
「ペントハウス以外の部屋の購入層に多いと言われるのはこの数年で会社を起業した40~50代の富裕層で、彼らは郊外の閑静な住宅街ではなく、六本木などのビジネス街にアクセスがしやすく、プライバシーが完全に守られている住居を選ぶ傾向がある。エレベーターが各住戸に直結しているというのも、そういった人の購入動機になっているのでしょう。秘密主義というのがわかりやすく富裕層の心をくすぐるのでは」(同前)
麻布台ヒルズのアマンレジデンスを購入した実業家の70代男性はこう言う。
「今は広尾の高級マンションに住んでいて、最近虎ノ門ヒルズステーションタワーの部屋を20億円で購入しました。麻布台ヒルズは、森ビルからカタログが送られてきて、病院が入っていることと、場所的にも資産価値があることに魅力を感じて内覧もせずに購入を決めた。
これから虎ノ門ヒルズに引っ越して、その後、麻布台ヒルズがオープンしたらそこに移ります。購入価格は森ビルに口止めされているので言えません。とにかく日本一高額で、六本木ヒルズよりも高い日本一の高層ビルに住めるということだけで買う価値があると思っています」
話題の物件に次々に移り住むのが趣味のようだ。